2018-02-06から1日間の記事一覧

結んで開かず(十二)裕美

借りていた本を返しに図書室に来た。返却カウンターに座っていたのは、三学期に僕のクラスに転入してきた裕美だった。「あ、図書委員だったの?」「うん。先生に頼んでしてもらった」「そうなんだ。あ、そういえば、今ちょっといいかな」「うん?うん。誰も…

結んで開かず(十一)喜一3

準備体操が終わりシャワーを浴びて、プールサイドを歩いていると、「肩、どうしたの」と綾が話しかけてきた。 学校では服で隠せても、スイミングの時はそうはいかなかった。 昨日の夜は女の人が家に来なかったので、父と二人だった。なるべく顔を合わせない…

結んで開かず(十)綾2

三学期最初の委員会の会議の為、放送室に向かっていたら「喜一!」と誰かが後ろからぶつかって来た。見なくても、綾だと分かった。いつだったかお互いの誕生日の話になり、僕が3月生まれで綾が4月生まれだったので、学年は一つ違うけど歳は一か月しか変わ…