BLACK PEPPER

BLACK PEPPER(3)

イセは橋の上にいた。 川は一直線に伸びて、河岸も土手も、土手に沿って植えられている銀杏の木も、高さが揃った工場やビルも一点に収束するように放射状になる。 その一点を見つめていると、自分も一緒に収束して吸い込まれるような感覚がして、ゾクゾクと…

BLACK PEPPER(2)

「ほら、よく言うだろ」アサは愉快そうに煙草の灰を落とした。はぁ。僕はアサが何を話し出すのか、思案を巡らせる。 「インディアンサマーは昼寝しろって」アサは得意げに煙草の煙を吸い込む。いや、聞いたことない。 「それはあなたの願望」と横に座ってい…

BLACK PEPPER(1)

僕はウィスキーが入ったグラスを持て余していた。ステージではビキニの衣装で飾った女が豚を連れて登場したところだった。グリーンランドから連れてきたという触れ込みのその豚は首輪を付けられてはいたが、人に慣れているらしく女が歩く方向に抵抗もせず後…