結んで開かず(七)

 真上から照りつける太陽は、波で濡れた砂もすぐ乾いてしまうんじゃないかと思うくらい、近くに感じられた。ウッチャンナンチャンに会える!とはしゃぐ妹と、その友達何人かを見て「若いなぁ」と独り言ち、パラソルの影で水筒の麦茶を飲んでいた。「十二歳の言うことね」と母が笑う。
妹の友達がウッチャンナンチャンの番組に応募して見事当選し、コーナーに三人組での出場権を得たらしく、それで妹にもお声がかかったということだった。母は、スーパーの仕事が休みの時は農家の手伝いに行っていた。時々、傷んだり曲がりすぎたりして商品にならないインゲンを大量に家に持ち帰ってきていた。お陰で、ほとんど毎日インゲンが食卓に上った。今日もどちらかの仕事だったと思うけど、たぶん妹のために休んできたんだろう。兄は、野球部の練習で来れないとのことだった。父は知らないが、来ていない。場所は観光ホテルのビーチで、手入れが行き届いていてごみ一つなく、海は透明度の高い薄いブルーで、僕も少し、テンションが上がっていた。
妹たち三人は何をするのかというと、海に浮かべた土俵の上で、相手チームとの三対三で靴下の脱がしあいをするらしかった。そしてそれに勝ったら、なんと、東京に行けるらしい。僕が行けるわけではないが、それでも、もしかしたら妹が東京に行けるかもしれない、となると普段あまり話もしないけど、少しくらいは応援してあげようかと思った。撮影までの時間、僕と母はパラソルの下に避難した。妹は友達と何やらひそひそ話をしていると思いきや、いきなりみんなで笑いだしたり、鬼ごっこをしているのか分からないけど、三人向かい合って、サッカーのフェイントのように体を左右に揺らして、弾けるように笑っている。そうか、妹にも、友達ができたのかと、安心とも焦りともつかない想いが胸で膨張する。妹は妹で、引越しの時に別れを経験しているだろうし、つらい思いもしただろう。それでも今は、あの小さな足で、ちゃんと歩いているんだなと、尊敬にも似た思いがこみ上げてくる。三人が駆けていく先を見ると、ウッチャンナンチャンの二人がホテルから出てきたところだった。ナンチャンは浜辺でモニターの前に立ち、ウッチャンは行司の恰好をして海に浮かんだ土俵にのぼった。対戦は一人ずつ行われるらしく、二人の女の子が遅れて土俵にのぼる。二人を向い合せ、緊張した面持ちで「はっけよぃのこった!・・と言ったら始めるんだよ」と言って場を和ませたウッチャンは、そのまま足を滑らせて豪快に海に落ちて行き、出場者と観覧のみんなを沸かせた。結果は一勝二敗で負けてしまった。最後にウッチャンに「悔しかった?」と聞かれた妹の友達は、不機嫌そうに「別にぃ」と答えてみんなを笑わせた。